いつもと同じようにお風呂に入るだけでどんどん電気代が節約できるという画期的な給湯器、エコキュート。皆さんは、エコキュートの配管がどのような仕組みや素材になっているか、ご存じでしょうか?
実際、「配管については、詳しくわからない…」という方も多くいらっしゃいます。
しかし、その管理を把握していなければ、思いもよらない配管トラブルになる可能性があります。エコキュートは長寿命であるということでも知られていますが、機械なので故障は付き物。中でもエコキュートに多いとされるのが配管の劣化や水漏れです。取り付け段階で間違った素材のものをつけてしまうととんでもないことになってしまうのです。
ここからはエコキュートの配管の特徴と、工事やメンテナンスについて詳しくご紹介していきます。この記事を読めば、どうすればあなたが効率の良いエコキュート生活を送ることができるのか理解できることでしょう。
エコキュートの配管の種類
まずはエコキュートの配管の種類から確認していきましょう。エコキュートの配管は大きく4種類に分けることが出来ます。
1-1. ヒートポンプ配管
1つめがヒートポンプ配管です。これはエコキュート本体と、お湯をためておく貯湯タンクを繋ぐ配管です。
貯湯タンクから水を供給する配管と、温めたお湯を貯湯タンクへ供給する2本の配管から成り立っています。
ちなみにこのヒートポンプ配管は、後程詳しくご紹介する「三層管」とよばれる特殊な配管を使用しています。
同時に、ここが最も劣化しやすく水漏れの起こりやすい配管でもあるのです。取り付けや交換の際にはこの配管に最も注意しましょう。
1-2. 給水配管
2つめは給水配管というものです。この配管はタンクと、浴槽のシャワーや水道の蛇口を繋ぐ配管です。
お湯ではなく、水を供給する際に使用します。この配管はエコキュートに限らず、他の色々な給湯器でも使用する一般的な配管です。
1-3. 給湯配管
3つめは給湯配管というものです。この配管は給水配管と同様、タンクと浴槽のシャワーや蛇口の間をつなぐ配管です。
エコキュートはヒートポンプユニットで熱を作り出し、ヒートポンプ配管を通じて出来たお湯を貯湯タンクに溜めておきます。
そして蛇口をひねると、貯湯タンクからお湯が供給されるのです。
その時に通るのがこの給湯配管です。お湯を供給するのには欠かせません。
1-4. 浴室配管
最後は浴室配管です。これは、フルオートタイプのエコキュートにのみ付いている配管です。
貯湯タンクと浴槽の給水口をつなぐこの浴室配管。主に追い炊きや自動保温をする際に活躍します。
エコキュートは追い炊きや保温をする際、浴槽内のお湯を浴室配管から回収し、再度温めなおして再び浴槽に戻します。
このときにお湯が行ったり来たりするのが浴室配管です。使用後のお湯が通るので、皮脂などで汚れやすいという特徴があります。
エコキュートにとって重要な「三層管」
エコキュートならではの特殊な配管である「三層管」と呼ばれる配管があります。これはヒートポンプ配管に使われるもので、通常の配管とは少々異なります。
ここからはこの三層管について見ていきましょう。
2-1. 三層管とは
三層管とは、その名の通り管が三層になっているもののことを指します。
実は発売当初のエコキュートにこの三層管は使用されておらず、三層管がメジャーになったのは近年のことです。
元々は「架橋ポリエチレン管」と呼ばれる管が単体でヒートポンプユニットに使用されていました。
2-2. 三層管の素材
では三層管は一体何の素材で出来ているのでしょうか。三層管の素材となっているのは主に以下の素材です。
- 架橋ポリエチレン管
- アルミニウム
- 架橋ポリエチレン管
三層管は三層のうち二層が架橋ポリエチレン管。つまりアルミニウムを架橋ポリエチレン管で挟んでいる構造ということになります。
そしてこの管の周囲に断熱材や保温材を巻いて、ヒートポンプ配管の完成です。断熱材は高い保温性やお湯の温度をキープするために必須の材料です。
2-3. 三層管の特徴
何故わざわざエコキュートに三層管が用いられているのでしょうか。その理由は三層管の使い勝手の良さにあります。
1つめは、架橋ポリエチレン管の間にアルミニウムを挟むことで耐熱性がアップするという点です。
2つめは架橋ポリエチレン管単体よりも耐侵蝕性に優れているという点。
そして3つめは、耐塩素性にも優れているというメリットがあります。
また、三層管は従来のものよりも容易に曲げることが出来ます。角度の付く場所にもピッタリとフィットさせることが出来るので、配管が綺麗におさまるというメリットもあります。
配管もかなり進化を遂げていることが分かりますね。
2-4. 三層管の寿命
三層管をエコキュートのヒートポンプ配管に用いた場合、その寿命は約10年とされています。
これはアルミ複合ポリエチレン管協会が発表している性能です。
架橋ポリエチレンとアルミニウムを交互に層にし、さらにType X(特厚管)とよばれる配管構造にすることによってこの長寿命が実現しています。
これが三層でなく、架橋ポリエチレン単体の配管であればあっという間に劣化してしまうようです。
中には5年も経たないうちに劣化し、水漏れを起こしたという事例もあります。
ヒートポンプ配管を選ぶ条件
ヒートポンプ配管は高温のお湯を通す配管です。そのため、通常の給湯専用配管とは少々求められる条件が異なります。
ヒートポンプ配管に求められる条件は以下の通りです。
3-1. 95度の温水に対応している
第一条件として、高温に耐えられるかどうかという点が重要です。
しかも一時的なものではなく、常に95度の温水が流れている状態でも10年程度機能するという高い耐久性が求められます。
架橋ポリエチレン単体の配管や、ポリブテン管、さらにHTVPといった配管は全て耐久性の面で問題があるのでヒートポンプ配管には使えません。
一般管をヒートポンプ配管に使用すると高温によって配管が変形し、内側が膨れてしまい、お湯が詰まる恐れもあります。
3-2. 紫外線や雨で劣化しない
ヒートポンプ配管は常に外の空気にさらされています。そのため、紫外線や雨の影響を受けにくい素材を選ばなくてはいけません。
ちなみにエコキュート本体には紫外線対策や雨による腐食対策が施されています。これと同様に、配管にもこうした工夫が必要なのです。
配管は断熱材で包まれているので、この断熱材も雨風に強い素材でなくてはいけません。
3-3. Type Xの特厚配管
三層管と一口にいっても、配管が三層になっていればどれでも使用できるわけではありません。
先ほどご紹介したように架橋ポリエチレンとアルミニウムを使用した三層管が大前提です。
さらにその中でも、最も内側の層が厚い構造になっている「Type X(特厚管)」と呼ばれるものが最もヒートポンプ配管には適しています。
内部の層が厚くないと、変形や劣化の原因になってしまうのです。
3-4. メーカー専用の配管で統一
配管の修理や交換、取り付けを行う際に最もおすすめなのはメーカー専用の配管で統一するということです。
メーカーが専用で使用している配管であれば全く問題ありません。しかし、中にはメーカーが直接配管の取り付けや工事などが出来ないということもあります。
そうなると自分で他の業者に依頼し、配管を購入しなくてはいけません。
こうした場合には先ほどご紹介したいType X 特厚の三層管の取り付けを依頼しましょう。
配管工事について
続いて、新規取り付けやエコキュート交換時の配管工事についてご紹介します。
4-1. エコキュートの配管工事
エコキュートの配管工事を行うシーンは大まかに3パターン。
1つはエコキュートを新規購入したとき。2つめはエコキュートを買い替えるとき。3つめはエコキュートの配管のみを交換するとき(故障)です。
新機購入や買い替えの場合の配管工事は、導入するエコキュートの種類によっても異なり、本体の設置などもあるのでかなり手間がかかります。
一方、配管のみの交換は比較的手軽です。
4-2. 配管工事手順
工事手順はいたって簡単。既存の配管を外して、新しいものを付け替えるだけです。
詳しい手順は以下の通りです。
- ヒートポンプユニットの水抜きをして古い配管を取り外し
- タンク側に新しい継ぎ手金具を設置し、新しい配管をつなぐ
- お湯用と水用、2本の配管を設置
- エコキュート側も同様に②・③の手順を行う
4-3. 配管工事の時間
エコキュートの配管工事は1時間~3時間が目安です。これならお湯が出ない時間も少なく、非常にお手軽ですね。
また、これは配管の交換にかかる時間です。
新規に浴槽へ配管を通すために穴をあけるなどとなると、1日がかりでの工事となります。
4-4. 配管工事にかかる費用
配管の取り換えにかかる費用は約1万円~2万円が相場です。また、これは一般的な家庭の平均的な価格。
配管を遠くにつなげるにはそれだけ長さが必要となり、同時に価格も上がります。
あくまで参考の価格として頭に入れておくと良いでしょう。
配管のメンテナンスについて
配管はどうしても水漏れを起こすなど、劣化が目立つ部品です。そんな配管のメンテナンスはどのように行えばよいのでしょうか。
ここからは配管をより長く使うためのメンテナンスについてご紹介していきます。
5-1. 自動洗浄で行う
最も簡単な方法が、エコキュートの機能で自動洗浄するという方法です。
この機能では主に浴室配管の洗浄を行います。
浴室配管は浴槽と直接つながっているので、皮脂や湯垢などで最も汚れやすい配管です。
フルオートのエコキュートには浴槽の排水を開始すると自動的に浴室配管の洗浄を始めるものもあるので、こうした機能はフルに活用しましょう。
5-2. 洗剤を用いて手動で行う
市販の洗剤を使用して自分で配管洗浄を行うのもおすすめです。洗剤を選ぶ時には、必ずメーカー推奨のものを使用しましょう。
方法は製品により異なりますが、大体の場合浴槽に張ったお湯に洗剤を適量溶かし、3分間追い炊き運転を実施。
そしてその後10分程度待機し、排水します。浴槽内をゆすぎ洗いしたら、今度はすすぎ運転をします。
これにより非常に強力な配管洗浄が出来ます。理想としては半年に1回のペースで行うと良いでしょう。
5-3. 業者に依頼する
自分で配管洗浄をしても、落としきれない汚れはあります。そんな汚れが気になる方は、専門業者に洗浄をお願いするのも一つの手です。
ちなみにこれは必ずしも必要ではありません。3年に1度は行うことをおすすめしますが、ご自身の都合に合わせて検討してみて下さい。
費用相場は1万5千円~2万円程度です。いくつかの業者に見積りをもらって安い業者に依頼してもいいでしょう。
まとめ
エコキュートの配管についてご紹介しました。
素材や取り付けの段階で最もネックとなるのはヒートポンプ配管でしょう。
そして洗浄が最も重要なのが浴室配管です。
これらの配管をしっかり管理しておけば、エコキュートの配管トラブルも最小限に抑えられるでしょう。