給湯器の名称でよく耳にするのが「エコキュート」と「エコジョーズ」。
環境に優しい給湯器だということは何となくわかりますが、実際の仕組みやスペックの部分については知らないという人も多いでしょう。
しかし、給湯器の交換や購入を検討している方は 、コストや大きさだけでなく管理面でのリスクの違いまで知った上で行うべきです。
今回はそんな「エコキュート」と「エコジョーズ」の違いについて詳しくご紹介します!
また、実際に購入するにあたって知っておきたいメリットやデメリットについても解説。この記事を読めばエコキュートとエコジョーズ、どちらが良いのか考えあぐねている方でも両者の特徴を掴み理解が深まることでしょう。
エコキュートとエコジョーズの仕組みの違い
両者の決定的な違いは、お湯の沸かし方にあります。
1-1. 電気と大気熱を利用するエコキュート
エコキュートは、お湯を沸かすのに電気と大気熱を利用します。そのため、かかるのは電気代のみ。
大気熱というのは、空気中に存在する熱のことです。これは自然発生するものなので、全くコストがかかりません。
しかも、大気熱を効率よく利用することによって従来の電気式給湯器よりも使用電力を抑えたものがこのエコキュートなのです。
1-2. ガスと排気熱を利用するエコジョーズ
エコジョーズは、お湯を沸かすのにガスと排気熱を利用します。そのため、かかるのはガス代のみとなります。
ガスを燃焼させる際の熱でお湯を沸かす仕組みです。排気熱とは、ガスの燃焼と共に発生する熱のこと。この熱を外に流さず、湯沸かしに効率よく利用します。
これによって従来のガス式給湯器よりもガス使用量を少なく抑えたものが、エコジョーズなのです。
エコキュートの仕組みをもっと詳しく
それではエコキュートの仕組みについてさらに詳しく見ていきましょう。エコキュートにはお得かつ便利な仕組みが多く搭載されています。
2-1. CO2を利用した湯沸かし
先ほどエコキュートは大気熱を利用してお湯を沸かす、とご説明しました。
さらに詳しくご説明すると、その大気熱とは主にCO2(二酸化炭素)のことを指します。
CO2は地球温暖化の原因にもなる有害物質です。そんなCO2をエコキュートは取り込んで熱を作り出すのに有効活用します。
電気でガスを使わないという点だけでなく、CO2を利用するという点でもエコキュートは非常に環境に優しいのです。
2-2. 安い夜間電力を利用
エコキュートは基本的に夜間に湯沸かしを行います。これは何故かというと、昼間は電力の需要が集中し、電気代も高くなるからです、
需要が少なく、料金も安い夜の内にお湯を沸かしてためておくことによって、電気代の削減にもつながります。ちなみにこの機能は通常の電気式給湯器にはないものです。
従来のものからエコキュートに取り換えることによって、月々の電気代は約3分の1になるともいわれています。
2-3. 学習機能でお湯の分量を調節
エコキュートには学習機能が搭載されています。これは日々のお湯の使用量の傾向値を学習するというものです。
エコキュートは夜間に1日分のお湯を沸かす際、学習した通りにお湯を沸かします。つまり特に何の設定もしなくても、いつも通りの丁度いい湯量を沸かしてくれるのです。
普段通りのお風呂に快適に入れる他、お湯の量に無駄がないので電気代の節約にもつながります。
エコジョーズの仕組みをもっと詳しく
次にエコジョーズの仕組みについてさらに詳しく見ていきましょう。エコジョーズも便利機能が多く搭載された給湯器といえます。
3-1. 排気熱を有効活用
先ほどエコジョーズは排気熱を利用してお湯を沸かす、とご説明しました。排気熱は同じガス式の給湯器でも、多くの場合は利用せずに捨ててしまうものです。
これに対し、エコジョーズは通常なら捨ててしまう排気熱を再度ヒーターに取り込み、その熱を利用してお湯をあたためます。
この仕組みによりエコジョーズの出す排気熱は、通常の排気熱よりもマイナス150度を実現しています。
3-2. 瞬間式の湯沸かしでいつでもすぐにお湯がでる
エコジョーズはお湯を沸かしてためておく、ということをしません。蛇口をひねれば必要な量の水が設備の中を通り、瞬間的に沸かされて出てくるという仕組みです。
要はエコジョーズ自体がケトルのような役割を果たしているといえます。
これにより、いつでも必要な量のお湯が出せるのです。ためたお湯が無くなり、湯切れするといった心配もありません。
3-3. 煮沸した安全なお湯が出る
エコジョーズは水をいったん煮沸し、そこから設定温度を狙って温度調節をすることでお湯を提供します。
また、水をタンクに貯蓄しておくこともないので、いつでも新鮮なお湯が供給されるように出来ているのです。
これは万が一の時に飲用水として利用できることを意味します。
エコキュートとエコジョーズ、結局どちらがいいの?
その他にもエコキュートとエコジョーズは異なるポイントが多くあります。実際に導入する際に検討すべき観点ごとに、それぞれの違いをご紹介していきます。
4-1. 大きさ
まず本体の大きさについてですが。これは圧倒的にエコキュートの方が大きいです。
エコキュートにはエアコンの室外機のようなヒーター部分に加えて、お湯をためておく300L以上のタンクが付属しています。
一方でエコジョーズはヒーター部分のみなので、大きさが全く違うのです。
一般的にはエコジョーズの本体はエコキュートの10分の1程度とされています。
4-2. 本体価格
本体価格も圧倒的に異なります。エコキュートの相場は30~60万円程度なのに対し、エコジョーズの相場は15万円程度です。
この理由は、エコキュートは装置自体が大きく複雑なのと、色々な便利機能が付いているからです。
エコジョーズには学習機能などはついておらず、瞬間式の湯沸かし機能のみが付いていることが多数といえます。
4-3. コスト
月々のコストについて見ていきましょう。この点に関してはエコキュートが圧倒的に安いといえます。
エコキュートは低価格の夜間電力を使用するので、その分電気代も抑えられるように設計されています。
エコジョーズは通常のガス式給湯器よりはガス代を節約できるものの、エコキュートの節約率には少々劣ります。
ただし初期費用となる本体価格も加味すると、コストの回収率はおよそ10年目で同等に並ぶようです。
4-4. 環境配慮のレベル
環境配慮という点でメリットが大きいのはやはりエコキュートでしょう。
エコジョーズも、従来のガス式給湯器よりもエコになったとはいえ、少なからずCO2や排気熱を放出しています。しかしエコキュートの場合は全て電気で稼働しているうえに、CO2を利用した湯沸かしを行っています。
家の周辺環境にも優しいのはエコキュートといえます。
4-5. 工事
導入がしやすいのはエコキュートでしょう。
エコキュートの場合、本体そのものが大きいので初期費用がかさむ傾向にあります。しかし導入の工事にはそこまで手間取りません。
一方でエコジョーズはガス専用配管や、一酸化炭素・煙の除去用の配管工事も必要になります。
そのため、工事費用と工事の手間はエコジョーズの方がかかってしまうようです。
4-6. 湯切れリスク
エコジョーズは必要な分だけ水を引き、瞬間的に沸かして供給するので一切湯切れの心配がありません。好きな時に好きなだけお湯を使えます。
しかしエコキュートの場合は、一晩で1日分のお湯を作り置きするのでそれが無くなると湯切れしてしまうのです。もちろんこれを防止するために、日中に追加で沸き上げを行う機能もついています。
しかし節約をしようと「夜間のみ沸き上げ」という設定にしておくと、日中に追加の沸き上げが行えずに湯切れしてしまうことに繋がります。
4-7. 温度調節
お湯の温度が安定しているのはエコキュートです。
というのも、エコキュートはいったんお湯を全て沸かした後に細やかな温度調節を行うからです。
一方エコジョーズの場合は瞬間的にお湯を沸かした後に、蛇口に到達するまでに温度調節を行います。そのためしばらくぬるいお湯が出てきたり、急に高温になったりと蛇口での温度調節が難しい場合もあるのです。
その点、エコキュートの方が毎日安定した温度のお湯を使えるので肌にも優しいといえます。
4-8. 安全性
もちろん安全性が高いのはエコキュートです。
エコキュートは全てが電気でまかなわれているので、発火の原因になることも一切ありません。
しかしエコジョーズはというと、ガスを使うのでどうしても煙や炎が発生します。
もちろん安全性は高く設計されていますが、劣化や故障などによって安全性が損なわれる場合も無くはありません。安全確認という点でもエコジョーズは定期的なメンテナンスが必要です。
4-9. 貯水機能
エコキュートには、貯水機能が付いています。タンクにはお湯と水が混合してためられています。一方、エコジョーズにタンクはありません。
もし災害などでライフラインが停止するようなことがあった場合、エコキュートには非常用の水栓がついているのでそこから水を取り出すことも出来ます。
実際に震災があったときなどはエコキュートのタンクから水を取り出して、難を逃れた人も多かったようです。
4-10. 寿命
エコキュートの寿命は15年~20年とされています。
一方エコジョーズの寿命は10年~15年。
エコジョーズは内部でガスと炎を使い、装置自体も高温になるため劣化が比較的早いようです。また、メンテナンスや部品の交換などもエコジョーズは定期的に行う必要があります。
エコキュートは本体価格が高い反面、そのコストを長い目で見て回収することが出来るのです。
4-11. 管理
管理のしやすさという点では同等でしょう。
エコキュートは自動でタンク内の水抜きや洗浄ができる機能もついています。これらを定期的に行わないと、タンクや配管が汚れて水垢などが出てくる可能性もあります。
一方でエコジョーズの場合、頻度は低いものの配管のメンテナンスや、場合によっては工事が必要になります。
両者どちらも少なからずメンテナンスは必要なので、その点では大きな差異はないでしょう。
まとめ
エコキュートとエコジョーズについてご紹介しました。
電気式、もしくはガス式と仕組みが全く異なる給湯器であることが分かりましたね。それに伴って、機能上のメリット・デメリットも多くありました。
それぞれのメリット・デメリットがあり、一概にどちらが良いとは言えません。
導入する際には自分が優先したい条件をリストアップして比較していくことをおすすめします。