近年たまに耳にするようになった「ヒートポンプ給湯器」という言葉。皆さんは、ヒートポンプ給湯器が一体どのようなものなのか、ご存知でしょうか。
実際のところ、「今使っている給湯器とどう違うのかよく分からない…」という方も多いはず。
しかし、特徴をよく知らずに給湯器の交換をしてしまうのはかなりリスクがあります。ヒートポンプは給湯器の一種ですが、ガス給湯器に比べて寿命も長く、より生活費を節約したいとお考えの方にお勧めなのです。
ここからは、「ヒートポンプ給湯器とは何か」について詳しく解説します。この記事を読めば、ヒートポンプ給湯器の仕組みから、使うことでどのようなメリットとデメリットがあるのかまで詳しく理解できることでしょう。
ヒートポンプ給湯器とは?
まずはヒートポンプ給湯器とはどのような給湯器なのか、見ていきましょう。
1-1. ヒートポンプ給湯器の仕組み
ヒートポンプ給湯器は、簡単にいうと「空気中にある熱を利用してお湯を沸かす給湯器」です。
ヒートポンプ給湯器は空気中にある熱、いわゆる「大気熱」と、電気を利用してお湯を沸かします。
従来の電気式給湯器は、100%電気の力を使ってお湯を沸かすのに対し、ヒートポンプ給湯器は大気熱を取り込んで熱を作るため、少ないエネルギーでお湯を沸かせるのが特徴です。
取り込まれた大気熱は給湯器の中で圧縮され、さらに高温になります。その熱を水に伝えることで、温かいお湯が沸く仕組みです。
1-2. ヒートポンプ給湯器の構造
ヒートポンプ給湯器は、大きく2つの構造に分かれます。
1つは大気熱を取り込んで熱を作り出す、本体です。「ヒートポンプユニット」とも呼ばれます。
そしてもう1つは、作ったお湯を貯めておく「貯湯タンク」です。ヒートポンプ給湯器はこの本体と、タンクがつながってできています。
本体はエアコンの室外機のような大きさで、貯湯タンクは400ℓ近い容量の商品が一般的です。
そのため、家の中ではなくベランダなど外に設置するのが一般的といえます。
1-3. ヒートポンプ給湯器の種類
ヒートポンプ給湯器は、大きく「家庭用」と「業務用」に分けられます。
家庭用は私達が生活で使うお湯を作るのに適したサイズの商品です。
一方業務用は、ホテルや福祉施設、病院など大きな施設で使うことを想定して作られた商品です。
両者はタンクの大きさもさることながら、1日の給湯量がケタ違い。私達が自宅用で購入するなら、家庭用ヒートポンプ給湯器を選びましょう。
また、家庭用ヒートポンプ給湯器は機能別に、以下の3種類に分けられます。
- フルオートタイプ
- セミオートタイプ
- 給湯専用タイプ
フルオートタイプは、追い炊きから自動湯張りなど、ボタン1つで自動的に稼働する最もハイスペックな種類といえます。
一方、セミオートタイプには自動追い炊き機能が付いていません。機能は自動湯張りや、足し湯のみです。
そして給湯専用タイプは、給湯口でなく蛇口から直接お湯を注いで湯張りするだけのタイプです。
最も便利なのはフルオートタイプで、最も機能がシンプルなのは給湯専用タイプ、といえます。
1-4. ヒートポンプ給湯器の商品とメーカー
ヒートポンプ給湯器は、一般的に「エコキュート」という商品名で販売されています。また、メーカーはさまざま。
各電化製品会社がそれぞれ、独自の機能を持ったエコキュートを開発しています。
たとえば三菱電機のエコキュート「Pシリーズ」では、マイクロバブルが浴槽内に発生し、保湿・保温効果をもたらす「ホットあわー」といった機能が付いているのが特徴です。
エコキュートを選ぶ際は価格だけでなく、こうしたメーカー独自の機能も見逃せません。
ヒートポンプ給湯器を使うメリット
ヒートポンプ給湯器を使うと、以下のようなメリットがあります。
2-1. 少ない電力でお湯を沸かせる
ヒートポンプ給湯器は大気熱を活用するため、節電に効果的です。
電気だけでお湯を沸かす給湯器に比べ、使用エネルギーを3分の1まで抑えられるのが最大の特徴といえるでしょう。
そのため、「電気代がかかりそう…」という点については心配いりません。
むしろ現在電気式の給湯器をお使いの場合は、ヒートポンプ給湯器に交換することで電気代を抑えられる可能性があります。
2-2. オール電化住宅に最適
ヒートポンプ給湯器は少ない電力でお湯を沸かせるため、オール電化住宅に最適です。
ヒートポンプ給湯器は電気で稼働しますが、その電力も単価の低い夜間電力をフルに活用するのが特徴。
電気代が安く抑えられる深夜に稼働し、翌日分のお湯を作ってタンクに貯めておくというシステムです。
そのため、エネルギーをガスでなく電気に一本化できるほか、電気代の節約も図れるというメリットがあります。
2-3. ガスでなく電気を使うため環境に優しい
ヒートポンプ給湯器は電気で稼働するため、ガス給湯器のようにガスを発生させません。
ガス給湯器独特の匂いが気になる方にとっても、ヒートポンプ給湯器はおすすめです。
さらに再生可能エネルギーである大気熱を活用し、使用電力は最小限に抑えられていることから、ヒートポンプ給湯器は非常にエコな装置といえます。
2-4. 停電時もタンク内のお湯を使える
万が一停電して電気が使えなくなった場合も、ヒートポンプ給湯器の中には事前に作ったお湯が常に貯まっています。
そのため、電気が使えなくても一定期間はタンクから直接お湯を取り出して使えるのです。
地震などの災害時に、お湯が確保できるのは非常に貴重なことといえます。
エコキュートには最低でも270ℓ以上のお湯が貯められるので、大切に使えば電気が復旧するまでの間しのげる可能性も大いにあります。
2-5. ガス給湯器よりも寿命が長い
ヒートポンプ給湯器の寿命は、10年~15年とされています。これに対し、ガス給湯器の寿命は10年前後。
ヒートポンプ給湯器の方が、やや長く使えることが分かります。1つの給湯器を長く大切に使えば、交換費用も抑えられてお得です。
2-6. 現在は価格も安くなりつつある
「ヒートポンプ給湯器=高い」というイメージがある方もいらっしゃることでしょう。
エコキュートと名前の付いたヒートポンプ給湯器が発売されたのは2001年のことで、発売して比較的日の浅い給湯器といえます。
そのため近年まで本体価格が100万円近いヒートポンプ給湯器も多く販売されていました。
しかし近頃では相場も落ち着き、安ければ10万円台で購入できるヒートポンプ給湯器も数多く登場しています。
2-7. ハイテクな給湯設定で節約を実現
ヒートポンプ給湯器のフルオートタイプには、メーカーごとにさまざまな節約機能がついています。
たとえば日立のエコキュートではオール電化住宅用に、適宜太陽光を使ってお湯を沸かすよう設定ができます。
基本的にエコキュートは夜間に稼働する給湯器ですが、日中の太陽光を使ってより電気代を節約することもできるのです。
他にも1日の使用湯量を自動計算して翌日に丁度良い量のお湯を無駄なく沸かすシステムや、湯量の推移をリモコンで視覚的に確認できるシステムなどがあり、使い方次第では大幅な電気代節約が期待できます。
ヒートポンプ給湯器のデメリット
どんな設備もそうですが、メリットがあればデメリットもあるものです。
給湯器の買い替えを検討している方は、ヒートポンプ給湯器のデメリットも知っておきましょう。
3-1. 初期費用が他の給湯器よりも高い
ヒートポンプ給湯器は、他の給湯器に比べて造りがやや複雑です。その上サイズも大きいので、本体価格はどうしても他の給湯器より高くなりがち。
ランニングコストが抑えられる分、初期費用は少々かさむのがデメリットといえます。
ただし、商品の選び方や値引き交渉次第では、表示価格より安く抑えることも可能です。
3-2. タンクや本体が大きい
ヒートポンプ給湯器はタンクや本体が大きいのもデメリットの1つといえます。
また、タンクにはお湯が入るためマンションのベランダなどでは耐荷重量が十分かどうかも設置時のポイントになります。
ただしメーカーによってはスリムな設計の商品も発売されているため、スペースが限られる方はコンパクトタイプのヒートポンプ給湯器を探すと良いでしょう。
3-3. 夜間に稼働するため音が気になる場合がある
ヒートポンプ給湯器は夜間に稼働するため、稼働音が気になる場合があります。
一般的にヒートポンプ給湯器の稼働音は40dB程度とされており、これは人の一般的な会話よりも小さい音です。しかし夜となると周囲が静かな分、音も大きく聞こえます。
ヒートポンプ給湯器を設置する際は、本体を寝室の近くに置かないなどの工夫をしましょう。
3-4. 湯切れのリスクがある
ヒートポンプ給湯器は直近の使用量を計測し、そのデータに基づいて翌日分のお湯を沸かします。
そのため、来客などで急激に使用湯量が増えると、タンクのお湯が空になる可能性があるのです。
もちろん、あらかじめ手動の設定で湯量を増やしておくことはできます。
これに加えてイレギュラーな場合にも対応させるなら給湯量に余裕のあるスペックの商品を選ぶと良いでしょう。
ヒートポンプ給湯器はこんな人におすすめ
ヒートポンプ給湯器のメリット、デメリットをご紹介しましたが、いまいち自分に合っているのか分からない…という方も多いでしょう。
そこで、ここからはヒートポンプ給湯器をおすすめできる方の特徴を解説します。以下の条件に当てはまる方は、ヒートポンプ給湯器の導入がおすすめです。
- オール電化住宅向けの給湯器が欲しい
- 給湯器の設置場所が確保できる
- 初期費用が多少かかっても長く節約しながら使える給湯器が欲しい
- 万が一のときもお湯を残しておける設備がほしい
まずヒートポンプ給湯器はサイズが大きいため、広いバルコニーやエントランスのあるマンションか、一軒家での導入が現実的です。
また、ヒートポンプ給湯器は「電気代の節約」「万が一の備え」としての側面が強い商品といえます。
こうしたポイントを重視したい方にとって、ヒートポンプ給湯器の購入は満足度の高いものになるでしょう。
まとめ
ヒートポンプ給湯器の仕組みや、メリット・デメリットについてご紹介しました。
ヒートポンプ給湯器は本体価格がやや高く、導入しにくいと思われがちですが、それだけ高度な技術が搭載された装置ということです。
活用方法次第では、電気代を大きく節約できるでしょう。
ただし、ヒートポンプ給湯器は生活環境や好みによって導入すべきかどうかが異なります
ヒートポンプ給湯器が自分に合っているかよく検討し、納得のいく買い物を実現しましょう。